現象の事象
ドイツ語で書かれている筈なのに、何故かわたしにはわかってしまった。耳鼻科では、どうやらだめらしい。
あーあ。ふぁっきん。です。
***
排水口に、どろりとした赤い液体が流されずにへばり付いてるのを、蛇口を閉めてから気付きました。それが、生理の血なのか、鼻血が混入した鼻水なのか迷ったけれど、一瞬では答えが出ませんでした。
前者である裏付けをしてみたんです。わたしはからだを洗ったばかりで、しかもその日は無性に苛々していました。ほら、それらしい。しかし、自分が不定期な月経であるにしても早すぎると思ったのです。だって先週サニタリーデイは終わったばかりなんですもの。
だから次に、後者について考察をしたんです。さっき湯に浸かりながらわたしは素手をちり紙がわりにして、鼻をかみました、そして洗い流しました。これについて、矛盾、と言いますか否定すべき点と言いますか、後者が答えであることに不可解なことは、ない、のです。それならばもはや正解では? と思われるかもしれません。だけれど、後者であると確定付けてしまいたくない。だって、鼻水ですよ?
そういえば、わざわざ言わずともいいのですが一応、わたしは副鼻腔炎です。その症状に、血混じりの鼻水が出ると隣町の先生が仰ったので、わたしは無色透明の鼻水が出なくても心配しません。もう一度言いますね、わたしは副鼻腔炎であります。
話を戻しますが、生理時の血か鼻血かを見分けるにあたって、二点違いがあげられます。生理時の血はどす黒い、ここです。そこで、例の現場を見たところ、その血は実に微々たるもので、鮮血かそうでないかは見分けがつきませんでした。次候補の二点目は、生理時の腹痛やからだの不調があれば、答えが自ずと見えてくるということ。ですが、この症状も残念ながらわたしには役立ちません。なぜならわたしは生理痛というものを味わったことがないからです。そういう体質なんですね。
ここまで一気に考えたあと身震いを覚えました。髪を、からだを洗ってすぐ無駄な推理を始めたわたしのからだは、温かい湯を求めていました。もう一度湯船にからだを浸けて、冷たくなった肩に湯をかけました。ぽちゃり、水面を揺らすわたしの手。そして、ため息を吐きました。
ギュボブ!
突如、静寂を打ち消すビッグバンが空間を支配しました。
違う! おならじゃない! からだが浴槽と擦れあったから! ねえ、本当なの、信じてよ! やめて! 論理的な言葉攻めもシャーロックホームズもいらないの! お願いよ! 信じて!
「……」
……ああ、うん。もうはいはい! わかった、わかりました! 認めます。排水口にある血は、うん、そう、諦めきれないわたしの片想いの欠片だってばぁあああああ!
「それで、昨日は眠れなかったのかい?」
はい……。先生、好きです。その薬指に輝くのは鼻水の結晶よね? ね? 赤い鼻水もあるし、黄色い鼻水もある、緑のもあるんだもの。だったら銀色の鼻水だってあるよね? ね?
「……君はなんだったっけ?」
人げ、あ……副鼻腔炎です。
おわり