同情愛
目覚ましはセットした。今日は、早めに寝よう。彼女は寝苦しいだろうに。けれど睡魔には勝てそうにない。ごめんね、と呟いて左を空けてベッドに入る。
彼女は秋田に行った。自分はすごく角館に興味がある。彼女にそれを話すと、彼女は興味のなさそうな声で「ふうん」と言った。多分、彼女は忙しい合間を縫って角館に赴いた。そして、たくさんのお土産を僕に渡しながら「大したことなかったよ」とでも言うのだろう。
彼女は頭がいい。その証拠の秋田での学会。僕は大学を卒業してすぐに就職したが、彼女は院に行き、学費を稼ぎながら大学に残って研究を続けている。
僕は、たいへんな努力家の彼女を尊敬している。いよいよ彼女も来年から社会人だ。これを機に結婚を申し出ようと目論んでいる。某有名企業に就職する彼女の収入は初任給からして、僕の月収に負けずとも劣らない。彼女は、頼りない僕のプロポーズを受け入れてくれるだろうか。きっと、受け入れてくれる。
彼女は、同情で僕の恋人をやっているのだ。付き合い出す前は友だちで、始まりは彼女からだった。「わたしたち、付き合おうか」と提案された。いままでに、「好き」と、「愛している」と、言われたことはない。臆病な僕は、自分から口にできない。
彼女にとって、僕とは惰性の関係。彼女と付き合う前から、彼女のことで相談している友人への悲鳴も最近は更に過度になった。それでも現状の良好は見られそうにない。
自分はとんでもないやらかし屋で、妙なミスをよくする。こんなだから、だめなんだ。彼女にあきれられる。「ごめんね」としか言えない。情けない、歯痒い。
目覚ましが頭の上で鳴る。気付けば朝で、カーテンから日射しが滲んでいた。鳥の声も聞こえる。
むくりと起き上がり、彼女にメールを送る。さて、準備をしなければ。
僕は知っている、同情も愛情のひとつだと。僕は卑怯で小狡い、最低だ、歯痒い。
彼女に会ったら、結婚しよう、と告げよう。
「苦笑、するかな……」
彼女は、誰より優しい。
おわり